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ワイン会と獺祭と

想像してみてください。
ピザの美味しいレストラン。
注文したピザが竈で焼かれている頃、テーブルにはピクルスやフォカッチャ、特製テリーヌに生ハム、お洒落なカナッペが所狭しと並べられています。
そして目の前のグラスには、きめ細やかな泡が立ちのぼる透明な液体。
ラベルをはがされたボトルからそそがれた、このグラスの中身は何でしょう?

これは昨年10月に開催したワイン会での一幕です。
同じ大学出身者の集まりで、ワインをはじめとするお酒の好きの人達で集まる会、ワイン会。
私もこのワイン会の副会長を務めております(お飾り副会長なので、仕事はしていません)。
10月のワイン会の会場が持ち込み可のレストランでしたので、自分の好きなワインを持ち寄り、集まった皆でそれらを飲みながら楽しい時間を過ごしました。

ワインのブラインドテイスティング(商品名を見せない状態でワインの産地や銘柄を当てるテイスティングのこと)の際、①外観②香り③口に含んだ際の感覚 で考えていくのが、一般的です。
レストランなど、照明を落としていたりする場では、外観から知り得る情報は少なくなります。
冒頭で書かせて頂いたグラスの中身は、泡がのぼっているのでスパークリングである事は確か。
色は、赤でもロゼでもない。レストランの照明で分かるのはそのくらい。

スパークリングワイン……一口にそう言っても、実に色々なものがあります。
私は若い頃、スパークリングワインは何でもかんでもシャンパンと呼んで良いなんて勘違いをしていた時もありました。
だって、子供の頃、クリスマスの定番だった『シャンメリー』というあの炭酸飲料。
あれはシャンパンの「シャン」と、メリークリスマスの「メリー」を語源としているそうです。
それくらい、日本人にとって、最もメジャーなスパークリングワインはシャンパンなのではないでしょうか。
実際には、シャンパンとは、フランスのシャンパーニュ地方の瓶内二次発酵を行って造られたワインの事を指します。
一定の条件を満たしたもののみ名乗ることができる名称なのです。
スパークリングワインを造る際、ワイン中に炭酸ガスを含ませるには色々な方法がありますが、シャンパンを造る時のこの瓶内二次発酵という方法は、一番手間のかかる方法のひとつです。
ちなみに、シャンパンと同じような瓶内二次発酵という方法で作られているスパークリングワインの中には、スペインのカバのように、シャンパンよりぐっとお手頃価格で購入できるものもあります。

さて、冒頭のグラスの中の飲み物の話に戻ります。
赤でもロゼでもなければ、白のスパークリングワインかな?なんて思うじゃないですか。
でも、違いました。
それは香りを確かめようと、グラスに鼻を寄せた時に分かります。
なんと、鼻をかすめるのは吟醸香!
グラスの中からは日本酒独特の香りが放たれいましました。
フルーティーな香りと味、優しい甘味が広がるこのお酒の正体。
それは『獺祭 スパークリング』でした!
獺祭のスパークリングは初めてでしたが、美味しかったので少し調べてみた私。
そこで、獺祭のスパークリングも、シャンパンと同じ、瓶内二次発酵の製法で造られていると知りました。

獺祭。
すっかり有名になりましたね。
抜群の知名度を誇るようになったのは、安倍総理のおかげでしょうか……?
実は私自身も、この獺祭にはとある思い出があります。

それは現在勤めている会社(とある小さな出版社)に入社したての頃。
まだ、世間でそれほど獺祭が有名になる前の話です。
ある日、出版記念会で著者に渡すから、日本酒を買ってくるようにとおつかいに出されました。
特に銘柄を指定されるわけでもなく、渡すのに適するお酒を選んでみるように言われた私は、デパートへ行き、店員さんと相談し、2本程、候補を決めました。
ところが、買う前に上司に電話で確認してみたところ、どちらの日本酒もダメだと言われたのです。
著者の出身に縁があるわけでも無い、単なる店員のおすすめくらいではだめだと。
そして、獺祭にしておけ、獺祭が良いと言われました。
この時初めて獺祭という銘柄を聞いた私は「えっ?だっさ?だっさい?」と何回か聞き返したのを覚えています。
上司から「カワウソのまつりと書いて獺祭だ!」なんて言われても、カワウソってどんな漢字たっけ?と思ったものです。
そもそも適したお酒とか言って選ばせたくせに、だったらはじめから獺祭を買ってこいと言ってくれりゃ良いじゃないかと腹立たしくも感じました。

後から獺祭が良いという理由について、丁寧に教えてもらいました。
獺祭と言うと、今やもう日本酒の名前という方が先に頭に浮かびますが、獺祭・獺祭魚という言葉があります。
獺は捕まえた魚を並べる習性があるから。
それが、人が供物を捧げる祭儀になぞらえられ、物書きが書く際に資料をいくつも広げている様子にも使われたりするようです。
ですから、著者に渡すのにはユーモアもあって良いというわけ。
この業界に入ったからには覚えておくようにと言われました。

最近、獺祭は本当によく見聞きするようになりましたが、私は必ず、入社したてのその日のエピソードが頭を過ります。
私は基本、ワインが好きで飲む頻度も多いのですが、日本酒も好きです。
寒い日におでんと熱燗なんて最高ですよね。
熱燗にするには純米大吟醸なんてもっての他!
もっと安いので十分美味しく頂けますから。
懐もホカホカってもんです。

日本酒の精米歩合や飲み頃温度のお話。
ソムリエの勉強をした時にお酒の総論として触った程度なのですが。
一度もっときちんと勉強してみたいものです。
今年はオリンピックイヤーですから。
日本酒の知識を深めるのも良いかもしれません。

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